株式会社の吸収合併手続の流れ
会社の合併とは、複数の会社が統合され、これにより消滅する会社の権利義務の全部が合併後存続する会社に承継されるものをいいます。
会社の合併には吸収合併と新設合併とがありますが、吸収合併が大部分を占めます。
以下は、株式会社同士を当事者とする吸収合併の基本的なスケジュールとなります。合同会社を当事者とする合併も可能です。
存続会社 | 消滅会社 |
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合併契約締結 | |
事前開示事項の本店備置き | |
株主総会の承認決議 | |
債権者保護手続 | |
株式買取請求手続 | |
新株予約権買取請求手続 | |
株券・新株予約権証券提出手続 | |
合併の効力発生 | |
合併による変更登記 | 解散登記 |
消滅会社株主への合併対価の交付 | |
事後開示事項の本店備置き |
合併契約締結
存続会社、消滅会社間で合併契約書を作成、締結します。
合併契約書作成後、契約締結に先立って、取締役会の承認決議を受けておく必要があります。
事前開示事項の本店備置き
存続会社、消滅会社はそれぞれ、合併契約の内容、合併対価など一定の事項を本店に備え置く方法で開示する必要があります。
株主に対し、株主総会で合併契約を承認するか、株式買取請求権を行使するかなどの判断材料を提供するためです。
株主総会の承認決議
存続会社、消滅会社双方で合併契約の承認決議を受けます。この決議は原則として特別決議となります。
債権者保護手続
存続会社、消滅会社ともに、合併する旨、相手方会社などを官報により公告し、また、知れたる債権者(会社が認識している債権者)には個別に催告する必要があります。
債権者に合併に異議を述べる機会を与えるためです。
債権者が異議を述べる事ができる期間は1カ月を下らないものであることが必要です。
異議を述べた債権者に対しては、弁済や相当の担保提供など、合併の効力発生日までに必要な手続を取る必要があります。
株券・新株予約権証券提出手続
消滅会社について、株券を発行している場合は効力発生日までに会社に株券を提出しなければならない旨を公告し、また、株主等に対して格別に通知しなければなりません。
この公告・催告は効力発生日の1カ月前までに行う必要があります。
新株予約権証券を発行している場合も同様の取り扱いとなっています。
株式買取請求手続
存続会社および消滅会社の株主で合併に反対する者は、当事会社に自己の株式を買い取ることを請求できることとされています。
この権利行使の機会確保のため、会社は合併の効力発生日の20日前までに通知または公告を行うものとされています。
新株予約権買取請求手続
新株予約権についても買取を請求することが可能ですが、新株予約権については消滅会社の株主にのみ認められています。
合併の効力発生日
効力発生日の到来により、消滅会社は消滅し、その権利義務は存続会社に引き継がれます。
登記申請
消滅会社は解散の登記を、存続会社は合併によって生じた変更事由につき、合併による変更登記の申請を法務局に対し行います。
合併対価の交付
存続会社は、消滅した会社の株主に存続会社の株式などの合併対価を交付します。
事後開示事項の本店備置き
存続会社は効力発生日や手続の経過などの事項について本店に備え置く方法によって開示しなければなりません。
この期間は合併の効力発生日から6カ月間とされています。