合同会社から株式会社へ移行することも可能

合同会社を設立して事業を行っていたところ、事業の拡大や取引先からの新株発行の要望により株式会社へ移行する必要が出てくることがあります。

このような場合、合同会社から株式会社へ組織変更することができます。

 

およその費用と期間

□ 登録免許税-合同会社解散-3万円
□ 登録免許税-株式会社設立-少なくとも3万円
資本金×0.15%。資本金2000万円までであれば最低額の3万円となります。
□ 官報公告 4万数千円
□ 登記完了後の各種証明書 数千円

比較的小規模な会社であれば実費で10万円ほどとなります。司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。

期間は少なくとも2カ月以上を見込んでおくのが無難です。債権者の状況によって異なってきます。

 

手続の流れ概略

手続は大まかに、「合同会社を解散」「組織変更で影響を受けうる合同会社の債権者の保護手続」「株式会社を新規に設立」となります。

組織変更計画の策定

設立事項決定

新設する株式会社の商号や目的、役員、機関構成、株主構成等を決めて行きます。決定事項は通常の株式会社設立と同様です。

この際、組織変更とともに以下の事項についても同時に変更できます

・商号 合同会社山田商店→株式会社ヤマダファーム
・目的 小売業→農産物の栽培・販売
・役員 取締役・代表取締役A→代表取締役A、取締役B、取締役C

他方、以下は同時に変更できません
・本店所在地
・増資

これらは組織変更登記とは別に申請書を作成し、ただ、一括して申請することになります(連件申請)。

 

効力発生日決定

効力発生日、すなわち、株式会社への移行予定日も決めます。

債権者保護手続が完了していることが必要であり、後述の官報公告期間のみで少なくとも1カ月以上かかります。

債権者の確認も行います。後述のように判明している債権者(知れたる債権者)には個別の催告が必要となりますので、債権者保護手続完了までの日数に影響します。

これら債権者保護手続の見通しも考慮に入れて効力発生日を決めます。

また、この効力発生直前の財務状況の証明書類も申請書類に含まれてくるので(登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書)、顧問の税理士さんがいるなら、あらかじめ効力発生日を伝えておくのが申請書類作成もスムーズになります。

 

変更計画は後に社員の承認(全社員の同意)を得る必要があるので、社員とも打ち合わせ等しながら策定していきます。

 

組織変更計画書・定款作成

組織変更計画の内容が定まったら、組織変更計画書を作成します。記載例は法務局公式サイト内にあります。

⇒持分会社(合同会社)の組織変更(持分会社→株式会社)の登記申請書(法務省公式サイト内)

 

同様に設立事項を反映した株式会社定款も作成します。

⇒定款記載例(公証人連合会公式サイト内)

 

定款の内容に沿って、設立後の会社の役員の就任承諾書や代表取締役選出のための取締役会議事録、互選書等の書類を作成することとなります。

 

債権者保護手続開始

官報取扱店に組織変更公告を申し込み、また、知れたる債権者へ個別の催告を行います。

⇒官報公告

総社員の同意

組織変更計画書につき、合同会社の全ての社員の同意を得ます。業務執行社員だけではなく、全ての社員の同意が必要となります。

この同意は効力発生日までに得ることが必要です。

同意を得たら、株式会社の会社実印を作成しておくと良いでしょう。商号を変更する場合は印影を間違えないように注意します。

 

組織変更の効力発生

組織変更計画で定められた効力発生日に、晴れて合同会社は株式会社に移行します。

この効力発生日から2週間以内に管轄法務局に対し組織変更の登記申請を行います。

 

登記申請

添付書類とともに登記申請を行います。株式会社の組織変更による設立と合同会社の解散の2つの申請書をそれぞれ別途作成し、それらを一緒に法務局に提出します。

ケースによって添付書類は変わるのですが、以下のような書類となります。

下記、いずれも法務省公式サイト内に記載例があります。

□ 定款
□ 組織変更計画書
□ 総社員の同意書
□ 役員の就任承諾書
□ 役員の本人確認書面
□ 債権者保護手続に関する書面
□ 登録免許税法施行規則第12条第4項の規定に関する証明書
□ 印鑑届 改めて株式会社の会社実印を届け出ます。

※ 個人の実印と印鑑証明書は、少なくとも代表取締役について必要となります(印鑑証明書は1通)。

⇒持分会社(合同会社)の組織変更(持分会社→株式会社)の登記申請書(法務省公式サイト内)

登記が完了したら新設株式会社の登記事項証明書や会社実印の印鑑証明書を取得し、各種手続を行います。