業務執行社員となるには社員(出資者)であることが必要
合同会社において業務執行社員(株式会社の取締役に相当)が就任するときは、その旨の登記が必要となります。
株式会社においては定款に特別の定めがない限り、取締役が株主である必要はありません。これに対し合同会社において業務執行社員になれる者は社員(出資者)に限られます。
すなわち、役員になるためには出資をする必要があることとなります。
具体的には、
① 既に出資して社員となっている者が業務執行社員となる
② 定款に相続による持分承継規定がある場合に、これによる承継者が業務執行社員となる
③ 新たに出資をして社員、業務執行社員となる
④ 社員から持分を取得して社員、業務執行社員となる
となります。
登記手続
① 既に出資して社員となっている者が業務執行社員となる
その会社で採る選任方法に従って、業務執行社員を選任します。例えば定款に「当会社の業務執行社員は、総社員の同意により社員の中から選任する」という規定がある場合は、総社員の同意によって選任することとなります。
社員であるAが業務執行社員となる場合の登記申請書の記載例は下記のようになります。
登記の事由 業務執行社員の変更
登記すべき事項
「社員に関する事項」
「資格」業務執行社員
「氏名」A
「原因年月日」令和〇年〇月〇日業務執行権付与
添付書面としては、前記の例では、定款、社員の一致を証する書面等が必要となります。
② 定款に相続による持分承継規定がある場合に、これによる承継者が業務執行社員となる
定款に相続により持分を承継できる旨の定めがある会社の業務執行社員Bが死亡し、Cがこの規定により持分を承継し社員、業務執行社員となった場合は下記のようになります。
登記の事由 業務執行社員の変更
登記すべき事項
「社員に関する事項」
「資格」業務執行社員
「氏名」B
「原因年月日」令和〇年〇月〇日退社
「社員に関する事項」
「資格」業務執行社員
「氏名」C
「原因年月日」令和〇年〇月〇日加入
添付書面は、定款、相続を証する戸籍一式等となります。
③ 新たに出資をして社員、業務執行社員となる
Dが出資をして社員、業務執行社員となった場合は下記のようになります。新たな出資がなされているので、多くの場合、資本金の額が増加した旨の登記も必要となります。
「資本金の額」金○○万円
「原因年月日」令和○年○月○日変更
「社員に関する事項」
「資格」業務執行社員
「氏名」D
「原因年月日」令和〇年〇月〇日加入
添付書面は、定款変更に係る総社員の同意書、出資の履行があったことを証する書面、業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面、資本金の額の計上に関する証明書等となります。
④ 社員から持分を取得して社員、業務執行社員となる
業務執行社員Eの持分をFが譲り受けて社員、業務執行社員となった場合は下記のようになります。
登記の事由 業務執行社員の変更
登記すべき事項
「社員に関する事項」
「資格」業務執行社員
「氏名」E
「原因年月日」令和〇年〇月〇日退社
「社員に関する事項」
「資格」業務執行社員
「氏名」F
「原因年月日」令和〇年〇月〇日加入
添付書面は、定款の変更に係る総社員の同意書、持分の譲渡契約書等です。
定款の定め方、上記のBCDが業務執行社員でない一般の社員である場合等、場合によって必要な書面は変わってきます。
このややこしさも、若干、合同会社が避けられる理由となっているかもしれません。