株式会社設立の流れ

株式会社の設立は、大きく、以下の流れで行われます。

①設立事項の決定

②定款の作成

③定款の認証・実質的支配者の申告

④資本金の払込

⑤登記申請添付書類の作成

⑥設立登記申請

⑦登記事項証明書・法人印鑑証明書取得

以下は、資本金100万円、株主がABの2人、取締役もABの2人の比較的小規模な会社を想定した設立の流れとなります。

出資額はAが70万円で70株、Bが30株で30万円。Aが代表取締役、Bが取締役とします。

会社の設立事務は、株主となる者ABが発起人という立場で行います。

 

あらかじめ用意しておくもの

(1) 発起人、取締役の個人実印
設例ではABの実印です

(2) 発起人、取締役の印鑑証明書
発起人の人数分+取締役の人数分。
設例ではA(発起人分および取締役分の2通)、B(発起人分および取締役分の2通)それぞれ2通ずつの計4通です。

(3)発起人個人の通帳
設例ではAの個人の通帳を資本金の入金口座として用意します。

(4)会社の実印
個人実印とは別に会社の実印を作成します。後述する商号調査の結果、商号の利用が可能と判断出来たら作成します。

 

①設立事項の決定

会社の商号やメンバー、機関構成など、会社の基本事項を定めます。

設例のような小規模な会社の場合、具体的に定めるのは概ね以下の事項です。

・商号
・会社の所在場所
・事業目的
・発行可能株式総数
・資本金
設例では100万円です。

・株式1株あたりの金額
旧法の名残で5万円とするケースも多かったのですが、現在は分かりやすさから1株1万円とするケースが多いです。

・設立時に発行する株式の総数
1株の金額×発行株式数が資本金額とイコールとなります。設例では1株1万円×100株=資本金100万円です。

・公告方法
通常は官報か電子公告を選択することとなります。

・事業年度
・株式譲渡制限の承認機関
・発起人と引き受ける株式数(出資額)
設例ではAが70株70万円、Bが30株30万円です。

・取締役
・代表取締役
設例ではAが代表取締役となります。

 

商号調査

現在では、同じ場所に同じ商号の会社が既に存在する場合でなければ、設立登記自体は行えます。

ただ、既存の会社と類似した商号を使用すると商号使用の差止めや損害賠償請求の問題も生じることから、類似の商号についても調査します。

商号の使用が可能と判断できたら、この時点で会社実印を含めた会社の各種印鑑(いわゆる4点セット)を作成しておくと手続がスムーズです。

商号の調査はインターネットで行う事ができます。

⇒オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について(法務省公式サイト内)

参考記事

【会社設立】使用できない商号

 

②定款の作成

①で決定した会社の基本事項は、多くが会社の根本ルールである定款の記載事項となります。

設立事項を盛り込んだ定款を作成します。

【会社設立】定款の記載例 株式会社

株式会社の定款の記載例については、公証人連合会もサンプルを出しています。

設例のような小規模な会社設立の場合、下記ページ「1 小規模な会社/2 中小規模の会社」の記載例が参考になります。

→定款記載例(公証人連合会公式サイト内)

 

自身で手続を行う場合、定款は書面で3部を作成します。

作成後、発起人が署名し、個人の実印で押印します。定款末尾の「発起人 ○○○○ 印」の部分です。

書面で作成した場合、印紙代4万円が必要となります。

 

③定款の認証

作成した定款は、公証役場で公証人による認証を受けます。この公証人は、新法人の本店所在地の管轄法務局所属の公証人となります。

茨城県に設立する場合は県内のいずれかの公証役場で、東京都に設立する場合は、東京都内のいずれかの公証役場で認証が可能です。

公証役場は、公証人連合会公式サイトの「公証役場一覧」から探すことができます。

 →公証役場一覧(公証人連合会公式サイト内)

 

定款の事前審査および実質的支配者となるべき者の申告

認証を受ける公証役場が決まったら、まず、事前に定款の内容を公証役場にメール又はFAXで送り、事前チェックを受けます。

また、この段階で実質的支配者となるべき者の申告書も送ります。

この申告は暴力団等によるマネーロンダリング、テロ資金供与等のために法人が不正利用されることを防止するため、平成30年から導入された制度です。

⇒実質的支配者となるべき者の申告(日本公証人連合会公式サイト内)

多くのケースでは過半数の議決権、過半数の議決権を取得する株主、過半数を超える者がいない場合は25%を超える議決権を取得する株主について申告します。

設例ではAが該当します。

申告書を作成したら、定款案とともに公証役場へ送信します。

押印について

令和4年より押印について取り扱いが変更となりましたが、茨城県・土浦公証役場では押印(司法書士による場合は電子署名)、印鑑証明書、免許証等の本人確認書類を申告書とともに送信する扱いとなっています。

公証役場により取り扱いが異なりますので、認証を受ける公証役場に申告書の添付書類についてご確認ください。

事前チェックを受けて定款の内容が確定したら、改めて公証役場に予約を入れ、定款の認証を受けます。

訂正が必要になったときのため、個人実印を持っていきます。

 

④資本金の払込

定款の認証が終わったら、発起人の口座に出資額を振り込みます。

口座は、発起人の個人名義の口座となります(法人口座はこの時点ではまだ作れません)。

出資者による出資があったか分かるよう、入金者の名前が記載される「振込」によります。

参考

【会社設立】資本金の入金方法と払込ができる金融機関

 

⑤登記申請書および添付書類の作成

登記申請書と、これに添付する書類を作成します。申請書、添付書類についても法務省がサンプルを出しています。

設例の会社設立の場合、下記ページ「1-3 株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立)」の記載例が参考になります。

⇒添付書類記載例(法務省公式サイト内)

いずれも記載例であり、実際に設立手続を行うにあたっては会社の構成に合わせて作成する必要があります。

作成するのは以下の書類です。

・発起人決定書
・取締役、代表取締役の就任承諾書
・払込証明書

発起人決定書

会社の設立事項のうち、定款で記載しなかった事項について決定した旨を記載します。

通常、定款では会社の所在場所は市町村までの記載にとどまるため、決定書に番地等を記載します。

例えば、定款では会社の所在地につき、「茨城県つくば市に置く」と記載されていた場合、決定書では本店所在場所として、「茨城県つくば市吾妻○丁目△番地□」等と記載します。

ほか、定款に資本金や、発起人の出資義務の内容などの記載がない場合、これらも決定書に記載します。

発起人が署名し、個人の印鑑で押印します。もしも定款に設立時代表取締役の規定がなく、取締役決定書で定めた場合は個人の実印での押印が必要となります。

 

就任承諾書

取締役、代表取締役となる人の就任承諾書を作成します。それぞれの個人の実印で押印します。

日付は定款作成日以降となります。

 

払込証明書

資本金の振り込み記録のある通帳の以下のページをコピーします。

・表紙-表紙裏

・見開き(名義人、口座番号等の記載のあるページ)

・振り込み記録のあるページ

払込証明書表紙→表紙-表紙裏→見開き→振り込み記録のあるページの順に4枚を重ねてホチキスで留めます。

現在は表紙、各ページ継ぎ目の押印は不要です。

日付は払い込みをした日以降となります。

 

⑥設立登記申請

設立登記申請書を作成し、15万円分の印紙を貼ります。

これに、定款、発起人決定書、就任承諾書、払込証明書、印鑑届出書を添付し、管轄法務局へ設立登記の申請を行います。

 

印鑑届出も同時に

この設立登記申請の際、設立後の会社の実印となる印鑑(会社代表印の印影)も同時に届け出ます。

⇒印鑑届出書(法務省公式サイト内)

印鑑届書に必要事項を記入押印し、他の添付書類とともに提出します。

会社代表印を押す場所と、個人の実印を押す場所とがあるので間違えないよう注意します。

また、下部の「□市区町村長作成の印鑑証明書は,登記申請書に添付のものを援用する。」のチェック欄にチェックを入れます。

これにより、取締役の就任承諾書と印鑑届出書に添付する印鑑証明書を1通で済ませることができます。

 

申請先

申請先は会社の所在場所を管轄する法務局です。

⇒登記管轄(法務局公式サイト内)

通常は「設立予定の市町村名」+「登記管轄」で検索できます。

申請は直接窓口へ提出するほか、郵送、オンラインも可能です。

この申請の日、具体的には申請書類、申請データが法務局に到着し受け付けられた日が会社の設立日となります。土日祝日は設立日とすることはできません。

【会社設立】会社の設立日 土日祝日は不可

 

⑦ 設立登記完了 謄本等の取得

申請書や添付書類に不備がなければ、申請から1週間~10日程度で登記が完了します。

登記が完了したら、法務局で登記事項証明書(謄本)や、会社代表印の印鑑証明書を取得します。

登記事項証明書は登記完了後すぐに取得できますが、印鑑証明書は印鑑カードを作成した後に取得できます。

備え付けの印鑑カード交付申請書に必要事項を記入し、会社代表印で押印し窓口に提出。カードは5分から10分程度で作成できます。

申請書が備え付けられていない場合、窓口で貰うことができます。

カードが作成されたら、印鑑証明書を取得します。

なお、証明書の取得には代表者の生年月日の情報が必要ですので、代理人が行く場合は予め伝えておきます。

登記事項証明書と印鑑証明書の通数ですが、かつては原本の提出が必要だったものが不要となっていることもあり、2通ずつ取得で概ね足りているようです。

 

会社設立に関する参考記事

 

カテゴリ:会社・法人設立